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TANTO安全対策通信 Vol.6 Thu, 6 Feb 2003

 

川口 聖美

 

みなさん、こんにちは。タントスキークラブ安全対策担当者の川口です。 今週末はTANTO行事ジュネス栗駒ですね。銘酒成瀬川が待ちきれない? さて、今回は事故の責任と自己責任について考えてみましょう。 しばしのおつきあいをお願いします。

 

 <事故の責任と自己責任>

スキーはスピードをともなう個人スポーツであり、つねに危険を回避するため の予知能力と、対応する判断力が求められるという独特な性格をもっています。 このような性格上から、安全に対する配慮が他のスポーツにくらべて厳しく 要求されます。

 

「スポーツやゲームに参加する者は、加害者の行為がそのスポーツやゲームの ルールないし作法に照らし、社会的に容認される底の行動である限り、その スポーツやゲーム中に生ずる通常予測しうるような危険を受認することに同意 しているものと解する」=受認の法則ですが、これまでのスキー裁判で適用を 否定された例もあります。

また、『FIS(国際スキー連盟)ピステルール』の前文では「スキーヤーは、 他のスキーヤーに対して完全な責任を負うこと、他人が万が一のケガに同意 しているとか、賠償請求権を放棄したと考えてはいけない。また、スキーヤー としてスキーをすること自体から生ずる危険を予測、予期しなければならない。 スキー事故の際に大幅な自己責任を負うという意識が事故防止に役立ち得る」 としています。

 

スキーヤー自身が危険を避けることと他人を傷つけないように 行動することが〝スキー安全の原則”であるわけです。

そして、スキー場のエリアについて気を配るようにしましょう。

 

リフトを利用 する際のルールとしてスキー場最上部のリフトから下の範囲において、ロープ をくぐってスキー場エリア外に出ていく、という行為をしないように。

 

「自己 責任で滑っていますから・・・。」正論のように聞こえるかもしれませんが、 自分の足で登り、スキー場に足を踏み入らないのであればそれも正しいでしょう。

 

ところがスキー場という場所は管理する人達がいて、トラブルが起きればその 人達の責任が問われます。明らかに入ってはならない場所にでも、滑ったあと が1本つくと必ずそれに続く人がいます。あなたの滑った跡を追った脳天気な人が事故を起こすかもしれないのです。

滑走禁止区域での滑走等が引き金になって雪崩が発生し、下方を滑走している 人に危害を及ぼす可能性もあります。

「滑走する自由の権利も第三者に危害を加える恐れのある場合は制限される」 という山での基本ルールを守りましょう。

 

スキー場関係者がロープくぐりをきらう理由は他にもあります。

ゲレンデ外で起こった事故に関して、本来はスキー場関係者に捜索・救助の義務はありません。 しかし、警察などからの要請は必ずあり、出ざるを得ない状況にあるのです。
よって、スキーパトロールが救助に駆けつけるのは、基本的に善意に基づく、 あるいは道義的な行為なのです。
しかし、そうであっても、一旦救助に関与した ら、社会的に見てそれ相当の行為、つまり適切な捜索・救出活動を要求される、 といった面もあるのです。これを民法上、事務管理と呼びます。実際の現場で 真っ先に捜索活動に当たるのは彼らなのですから・・・。

 

また、最近ではゲレンデそばでの雪崩等による事故が多発しています。
自己責任をとることの本当の意味についてここでもう一度考えてみましよう。

 

バックカントリーのようにゲレンデエリア外に出ていく際には、”潜在的な危険” を認識し、”自らの判断で行動”し、”決断は自己の責任”で行うことをはっきり 自覚する必要があります。

そして事前に危険に対処しうる技量を身につけることが重要なのです。

 

山の道具の使い方を練習したり、救急法を学んだり、自力で行動できない人を搬出、 搬送する訓練やアマチュア無線の資格も必要でしょう。一定の知識や技術を身に つけてから山に入るのが普通です。この他にも、地図と雪を読む能力や天気の予測、 そして何より、まずは絶対的な体力。

 

自己責任と言うと、事故を起こした時にその責任を負えばよいのだ、と短絡的に 考える人も多いようです。
しかし、それは結果であって、大切なのは不測の事態 に対してどのように日々用意しているか、ということです。

そして、最後の段階 として、保険に入りましょう。山で使うべく揃えた数々の道具の1つとして考える とよいでしょう。

自分は自分ひとりで成り立っているのではなく、常に社会的自己 という面もあるのだ、という認識に立てれば、その重要性も理解できるはずです。

 

自由なラインを描くためには「自由」という意味をはき違えてはいけません。自由 になるには、相応の条件をクリアする必要があるのです。

 

今回はちょっとおもーい話でしたが、脅しているわけでは・・・
普段の生活でも意識はしていなくとも、リスクと自己責任というものは常に存在 しています。

では安全第一(^^)vゲレンデで笑顔でお会いしましょう。

 

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