TANTO安全対策通信 Vol.8 Thu, 27 Feb 2003
川口 聖美
みなさん、こんにちは。タントスキークラブ安全対策担当者の川口です。
今週末はTANTO行事八甲田山バックカントリーですね。おーっと、私が幹事だ!
さて、今回は冬山の気象についてお勉強してみましょう。 しばしのおつきあいをお願いします。
<冬山の気象>
スキーに出掛ける時ってお天気が気になりますよね?パウダーねらいは特にね。
冬山は寒気と強風、豪雪、短い日照時間、雪崩の危険など厳しい環境下にあります。
天気も激しく急変しやすいです。その時の気象状態で、一歩間違えば、
たとえ1,000m以下の低山でも悲惨な遭難事故を起こすことがあります。
今週末はバックカントリーということで、冬山の気象の基本について勉強して みましょう。
[山の気温]
標高が増すにつれて気温は下がります。
気温の下がる割合は「気温の減率」といって、高度100mについておよそ0.6℃です。
また、体感温度は風の強弱に影響され、一般に風速1m増すごとに1℃以上(1.2~1.5℃)
低くなるといわれています。
そして、身体や衣服が濡れていると極端に大きくなります。
このほか、体感温度に影響を及ぼすのに日射の有無があります。
[山の風]
一般に風は、地上より高くなるにしたがって強くなるものです。
標高2,000m以上になると、日本海側では西ないし北西、
太平洋側では北西ないし北の風になります。これが冬の季節風です。
しかし、山での風は地形の影響が大きく、一般に沢筋では沢にそって風が吹き、
尾根筋では尾根に対して直角の方向に風が吹きます。
また、天気のよい風の穏やかな日には、日射の影響によって、
昼は谷から山に向かって風が吹き上げ(谷風)、
真夜中から夜明けにかけては、山から谷に向かって風が吹きおろします(山風)。
ただし、これはあくまで高気圧におおわれた天気のよいときの状態で、
低気圧が接近しているときなどは様子が違います。
[地吹雪]
標高2,000m以上の山では、風の弱い日でも風速10m/秒くらいの風がつねに吹いています。
このようなときはたとえ天気がよくても「地吹雪(飛雪)」が生じます。
地吹雪は、軽い積雪なら5m/秒の風でも生じ、20m/秒も吹くと頭上より高くなり、
吹雪と区別がつかなくなり、視界を閉ざし行動を妨げます。
南極やグリーンランドでは、猛烈な地吹雪をブリザードと呼んでいます。
[霧]
山はいろいろな原因で気温が低下するため、
空気中の水蒸気が凝縮して水滴(雲粒)となります。
視界が1km以内になると霧とかガスといい、1km以上のときは「もや」といっています。
濃霧に閉ざされると、自分の現在位置を見失うばかりでなく、
「ホワイトアウト」といって、白一色の冬山に地形の錯覚を起こし、
平衡感覚が低下することがあります。
[降雪]
冬季に現れやすい天気図の見方です。
*冬型(西高東低)
日本付近を中心として、西方の気圧が高く、東方の気圧が低い状態をいい、
日本海側は雪、太平洋側は冬晴れとなります。上空に強い寒気があると全般に
乾雪で、関東周辺の山沿いの平野部でも雪が降ります。多雪地帯では降雪が多い
と新雪表層雪崩が起きやすくなります。
*2っ玉低気圧型
低気圧の中心が日本海方面と太平洋側とにそれぞれある状態をいい、全国的に
広範囲にわたって悪天をもたらします。降雪は湿雪で、時には雨となることも
あります。
2っ玉低気圧が去ると、その後は強い冬型の天気図となるため、悪天に引き続き
上信越方面や関東北部地帯では降雪の天気となり、山では要注意です。
*南岸低気圧型
低気圧が日本の南海上や本州の南岸沿いを進む状態をいい、冬季冬晴れの多い
太平洋側の地帯で天気が悪くなり雨や雪を降らせ、時には大雪となることも多い
です。一方、連日雪を降らせていた上信越方面は天気が良くなりますが、関東
北部地帯は低気圧の影響を受けて、雪が降りやすくなります。
*日本海低気圧型
季節風を弱める日本海低気圧はあまり発達したものはなく、等圧線の間隔を広げ、
日本海側の雪は小止みか晴れ間が出て上信越方面ではスキー日和りとなります。
日本海に発達した低気圧が入ってくると、山の天気は大荒れとなり、降雪は湿雪
となります。山の積雪は気温上昇や降雨も伴うため、積雪層が不安定となり、
冬季初期の全層雪崩が起きやすくなります。
[降雪量]
一般に、降ったばかりの新雪の場合、降雪量1cmが降水量の約1mmに換算されま す。
また、雪の落下速度は1秒間に約1mくらいなので、
風があると、雪は横から吹き付けてくることになります。
天気図を言葉だけで説明するのはちょっと苦しかったですねえ(^^;)
でも天気図が気になってきたでしょ?
八甲田ではガイドさんが神様に見えますよ。
では安全第一(^^)vゲレンデで笑顔でお会いしましょう。